帰ってきたニコロ。 どんな大修理だったとしても、修理期間が3年以上もかかるというのは、かかり過ぎじゃないの・・
そうではありますが。 ニコロの修理・調整をしてくれたのは、長町朋行さん83歳。 ニコロのトシは制作年が不明ですが、300歳は超えているでしょう。 遠い昔に誕生したチェロで、木そのものが弱ってきている部分があるし、長い間使い続けているうちには傷もできる・・
名器の部類に入る名工の作品。 そのオリジナリティを大切に残しつつ、補強が必要な部分には木を薄く削って弱いところを補強する・・ 適切な判断と、それを行なう技術を持っている経験豊かな修理工は、そう多くはいないでしょう。
長町さんは弦楽器のことを知り尽くした百戦錬磨の修理工。 息子さんの話では、奥さんの介護をしていた時期もあり、小生は、修理の催促はなるべくしないように控えていました。 急がせたらよい仕事ができないと思ったのです。
3年数ヵ月ぶりに元気になったニコロに再会したのは、ついこの間の1月11日。 小生の誕生日に長町さんは拙宅に持ってきてくださいました。
ニコロと洋子さんの遺品のチェロを弾き比べ、長町さんに1時間以上も聴いてもらいました。
気になるのは修理代です。 恐る恐る尋ねると。
《まだわかりません。 弾きまくり弾きこんでください。 今の暖房で乾燥しまくっている時期から、4月になってニコロがどういう状態になっているか・・ その時にまた調整が必要になるかもしれません。》
二つのチェロ。 一つは大震災で大津波に襲われ、天国へ旅立った持ち主のご遺体の脇でボロボロの状態で発見されたチェロ。 修理を試みていると、そこには誰もいないのに、離れたところで誰かがじっと見つめているようだったと・・ 修理をした大船渡の葛西大志郎さんのお話です。
もう一つのチェロは小生をチェロ弾きとして育ててくれたチェロ。 家族を養ってくれたチェロ。
どちらのチェロにも忘れ難い思いが詰まっている。
《血圧もいいですよ。 お酒減らしていますね。 肝臓も腎臓も、尿酸値もいいですよ。》 先日、嬉しそうに血液検査の結果をお知らせ下さった循環器内科の主治医。
当分の間チェロは弾けそうだ! ニコロとヨウコ、二刀流でいくか。
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東日本大震災復興支援のために 「じいたん子ども基金」を開設しました。
(2012年12月10日)
【東日本大震災支援 じいたん子ども基金】 代表 土田英順
北洋銀行 札幌西支店 普通 5161660
ご支援、よろしくお願い申し上げます。