<ベートーベンの知られざる名曲>
- 2020/06/17
- 19:16
ベートーベンはチェロとピアノのためのソナタを5曲作曲しました。
その中で第3番イ長調 作品69が人気のある名曲として知られています。
このブログでは、心の奥底に沁みる知られざる名曲、感動的な第5番の第2楽章をご紹介させて頂きたいと思います。
Adagio con molto sentimento d‘affetto(ゆっくりと 極めて感情を以って 情趣豊かに)
上記はベートーベンのチェロソナタ第5番ニ長調 作品102-2の第2楽章冒頭に、ベートーベンが指定した標語です。
来年は東日本大震災10年の年。
3月6日(土)の午後、札幌市内の「ザ・ルーテルホール」で復興支援のチャリティコンサートを企画しましたが、このソナタもプログラムに加えました。
関連死を含めると、2万人を超える犠牲者を出した千年に一度と言われる未曾有の東日本大震災。
犠牲者を追悼する音楽としては、チェロとピアノの演奏なら上記のソナタの第2楽章、弦楽四重奏で奏でるなら、ベートーベンのカルテット第16番ヘ長調 作品135の第3楽章が、犠牲者のご冥福を祈り、霊を慰める音楽としては最も適しているのではないかと思います。
この企画を決めた後、小生は、まず、このソナタの第2楽章から練習に取り組みました。
およそ1ヵ月になりますが、未だにこの楽章の半分ぐらいまでを、四苦八苦しながら練習しています。 やってもやっても自分のものになっていかないのです。
ベートーベン、45歳の時に完成した作品。
32歳の時に耳の病に絶望して遺書を書きましたが、自殺を思いとどまって13年。
晩年のベートーベンを思わせるような、音楽に寂しさを感じますが豊かな気品に溢れています。
深い深い音楽で、情緒豊かな感傷味に富む楽章です。
哀愁的な暗い気分、天国的なのどかさ、平和を望むようなチェロとピアノの対話、終盤は天に向かって涙ながらに訴えるような気分が絶頂に達します。
このような音楽を演奏する場合は、ピアニストと心が完全にひとつにならなければなりません。
ピアノはチェロに寄り添うだけでなく、だだ合わせるだけでもなく、息が合うだけでも駄目。
自らの心で感じたものを主張し、それがチェリストの心と一体となった時、そこに感動的な音楽が生まれるでしょう。
それを創り上げるには、まずお互いに自分のパートをマスターし、その後、2人が納得できるまでリハーサルをやることしかありません。
ピアニストは鳥居はゆきさん、2021年の年が明けたら本番まで60日ぐらい。
その間、10回以上リハーサルをお願いしたいと思っています。
音楽は深いです。 音楽は難しいです。
「ハイリゲンシュタットの遺書」として有名なベートーベンが32歳の時に書いた遺書。
1997年、札幌交響楽団を退団した数年後、ウイーンを訪れ、地下鉄と市電を利用してベートーベンが遺書を書いた家に行きました。
地下鉄の終着駅、ハイリゲンシュタット駅で降りて市電に乗り換え、終点のベートーベン ガング(ベートーベンの散歩道)へ。
ベートーベンの胸像が建てられた公園を左手に見ながら「散歩道」を進んで行くと、遺書を書いた家があり、遺書はその家で入手しました。
日本語訳版もありました。
遺書は、現在、ハンブルグ市立図書館に保管されているそうです。