<拙著より、ボストン交響楽団時代>
- 2020/09/11
- 17:40
拙著「チェロ弾き英順 音楽の人生(たび)」第2章、「ボストン交響楽団時代」30話の中からご紹介させて頂きます。
<ホテルの部屋を間違えて・・・>
【1970年、ユージン・オーマンディ指揮、ボストン交響楽団の演奏旅行でフィラデルフィアにも行きました。 ここでも終演は午後10時半で、翌日はコネチカット州のハートフォードで午後2時開演のコンサートがありました。】
【日本のオーケストラよりハードなスケジュールに僕はもう驚かなくなっていましたが、この時はハプニングの連続でした。 終演後、楽団員は午後11時ごろ貸切バスで会場を出て空港へ向かい、深夜便でハートフォードへ移動するのです。】
【ハートフォードは、コネチカット州の中心からやや北のマサチューセッツ州寄りにある都市で、ペンシルベニア州のフィラデルフィアからの飛行時間は一時間ぐらいだったと記憶しています。】
【この街の郊外には、一九世紀のアメリカ文学を代表する作家たちの家が残っています。 「トム・ソーヤーの冒険」や「ハックルベリー・フィンの冒険」などの名作を残したマーク・トウェーンが住んでいた家は、部屋数が一九室もある豪邸だそうです。 その家の向かいには、「アンクル・トムの小屋」で名声を得たハリエット・ビーチャー・ストゥの家があります。】
【さて、ハートフォードへ移動する晩、フィラデルフィアは運悪く悪天候でした。 空港で天候の回復を待ってから出発しましたが、飛行機は揺れに揺れ、到着は予定より大幅に遅れていました。】
【ボストン響は飛行機移動の時、楽団員を二機に分けて搭乗させます。 第一ヴァイオリンは18人いるので9人ずつ、またチェロは11人いるので6人と5人ずつ、というように。】
【ホテルにチェックインしたのは午前3時ごろでした。 フロントで部屋のキーを受け取り、疲れ果てた体でヨロヨロと部屋にたどり着き、ドアを開けて電気のスイッチを捜していると突然、暗闇の室内から「who are you? (誰だ、お前は!)」 と、ドスのきいたしわがれ声がして驚かされました。】
【あり得ない! 疲労のあまり、オレは気が狂ったか? 廊下の灯りで自分の部屋のキーを見ると、僕の部屋ではありませんでした。 部屋が違うのにドアが開いてしまったのです。】
【僕も仰天しましたが、部屋の主はもっと驚いたでしょう。 僕は慌てふためきシドロモドロになって「部屋を間違えました。 ごめんなさい、ごめんなさい。」と、姿が見えない部屋の主に向かって平謝り。】
【部屋を出ようとすると、今度は「グンナ~イ」とやさしい声が返ってきました。 多分、彼はボストン響のメンバーだったのでしょう。 僕の下手くそな英語を聞き、このそそっかしい男はヒデだ、とわ分かり安心したのでしょう。】
※ 文とは無関係の写真ですが。 シーズン中休みは日曜日だけ。 市内の名所「ボストンコモン」へ家族で行きました。
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