<引退した札幌の名工>
- 2020/12/10
- 20:58
札幌のこの冬は未だに雪が降りません、いえ、時折サラサラっと降るのですが、すぐに溶けてしまい、寒さは厳しさを増していても、路面は夏の路面と同じです。 今日もスニーカーで軽やかに、およそ7,000歩の散歩でした。
さて、1974年7月、札幌交響楽団に入団して北海道に住むようになりましたが、それ以後、チェロの修理や調整、弓の毛の張り替えなどは、札幌市内で弦楽器の修理工房を開いている長町朋行さんにお願いしてきました。
小生が札幌に来た当初、長町さんは、市内の2階建ての木造のアパートに住み、1階を修理工房に、2階を住居にしておられました。 2世帯分を使っておられたのですね。
しばらく間をおいて行ってみると、工房は2階に、住まいは1階に変わっていました。 更に数年して行ってみると、工房と住まいは元に戻っていました。
家財道具を上から下へ、下から上へ、また上から下へ。 修理に必要な道具もその都度上下に運んだのですから、さぞかし大変な引っ越しでしたでしょう。
どうしてそんな七面倒臭いことをするんだろう・・と、思いましたが、これ、単なる気分転換ではないかと。 今度お会いしたら聞いてみようと思っています。
その後、長町さんのご家族は、札幌市内ですが、小樽方面の郊外に新居を構え、中央区の2DKのマンションを新工房にしました。 その工房で、優秀な弦楽器職人に育てた息子さんと2人で働いていましたが、彼は、小生と同じ83歳。 最近引退してしまったのです。
弦の張りは強めの調整に、弓の持ち方では、親指を弓のどの位置にあてるか、その為には毛の長さを微妙に調整して、毛箱の位置を何処にするかなど、札幌の弦楽器職人で小生の好みを知っているのは、長町さんだけなのです。
ですから小生は、彼が引退した後もご自宅に電話をして修理・調整をお願いしています。
《運転免許証を返上して、バスや地下鉄を利用して私のところへチェロを持ってくるのは大変過ぎだから。 私、車でお宅へ取りに行きます。 修理が終わったらお届けしますから。》
なんと親切な職人さん。 今年1月から4度も往復してくださいました。 長年の経験で得た技術・知識。 チェロ弾きにとって、信頼できる弦楽器職人は欠かすことができない貴重な存在なのです。
小生が演奏活動を長く続けていられるのは、長町さんとの出会いが、その要因の一つになっていることは間違いなさそうです。
☆ 2012年9月、岩手県大船渡市で出会った、舩渡洋子さんの遺品のチェロは、大津波に襲われ、弦は錆びていて、駒もありませんでした。 駒を作ってくださったのは長町さん。 左の駒が最初の駒で、数年経ってチェロの状態が変わったので、1mm高い駒(右)を削ってもらいました。
更にチェロの状態が変わり、二つ目の駒より1mm高い駒が現在使っている駒です。
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東日本大震災復興支援のために 「じいたん子ども基金」を開設しました。
(2012年12月10日)
【東日本大震災支援 じいたん子ども基金】 代表 土田英順
北洋銀行 札幌西支店 普通 5161660