福島県双葉郡葛尾村にお住まいの荒井雅美(まさよし)さんは、四国生まれで東京育ちのマラソンランナー。 初めてお会いしたのは、2016年4月、福島県田村市都路町の和風レストランでした。 お互い昼食にそこへ行き、偶然の出会いでした。 和風レストランと言っても、古い農家を改造した感じの、和室二部屋の間の襖を外して、広くしただけの畳の部屋でした。
東日本大震災の大災害に心を痛めた彼は、単身、田村市へ移り、「田村市復興応援隊」を結成しました。 隊員は何人ぐらいいるのですか、と聞いたら、いません、応援隊は隊長の僕一人です、と笑っていました。 お人柄を感じて、好感の持てる面白い御仁だなぁ、というのが第一印象でした。
その荒井さんが、和風レストランでお会いした翌年の2017年6月に、都路町の公民館でチェロコンサートを企画してくださいました。
2011年、原発事故で町民3千人全員に避難指示が出て、一時は空っぽになってしまった町。 小生が2016年に初訪問した時は、避難指示が解除されて町民の3分の2、2千人が町に戻って来ていました。
公民館のコンサートにお集まり下さった40~50名の方は、恐らく生のチェロ演奏を聴くのは初めての人ばかり。 その中に都路小学校の若い女性の先生と、女の子ばかり児童6~7人が最前列で熱心に聴いていました。
アンコールが終わると、小学生たちからお花を頂きました。
終演になっても、受付のテーブルに置いた販売用のCDは1枚も売れませんでした。 皆さんがCDの前を素通りしてお帰りになる中で、先生と女の子たちは立ち止まり、お喋りしながら興味深そうにCDを見ていました。
手に取って見ていいよ、裏側に曲目が書いてあるから見てご覧。 今日弾いた曲もCDに入っているよ、好きなのがあったら1枚ずつあげるよ、と言ったら、彼女らは歓声をあげて喜びました。 それぞれが気にいったCDを1枚ずつ手に取り、嬉しそうにお喋りしながら帰る彼女たちの後ろ姿を見て、小生は、この街に来てチェロを弾いてよかった・・先生と女の子たちにCDをプレゼントしてよかった、、と思いました。
札幌に帰ってしばらくして荒井隊長さんから電話がありました。 5ヵ月先ですが、11月に都路小学校と中学校へ行ってチェロを弾いてくれないか、と。
小生は、一もニもなく承諾しましたが、移動日程の都合でコンサートが実現したのは小学校だけでした。 コンサートの日、小生は子どもたち全員に色鉛筆とスケッチブックを持って行き、喜ばれました。
あれから4年。 あの子たちはどうしているかなぁ。 あの時の3年生以上は卒業しているなぁ。 小生は、先日、電車で札幌駅至近の本屋さんへ行き、現在の全校児童46人全員に、一人につき2千円分の図書カードを買い、郵便局から学校へ送りました。 数日後、都路小学校の藤田教頭先生から電話がありました。 電話の向こうの教頭先生の声は喜びで弾んでいました。 教育委員会の広報誌に図書カードプレゼントのことを載せるとのことでした。 子どもたちも、きっと歓声をあげて喜んでくれたでしょう。
放射能汚染で生まれ育った町を追われ、バラバラになった友達同士は、4年経って故郷に戻り再会しました。 でも、2017年の時点では戻ってきたのは2千人。 今はどうなっているのでしょうか。 コロナが終息したら、また是非訪れてみたい町のひとつです。
※ 3月11日に札幌市内の小劇場で行われた「東日本大震災復興支援 無観客チャリティコンサート・464」の動画を配信中です。 配信は4月13日に終了予定でしたが、視聴回数が伸びているので5月13日まで1ヵ月延長することにしました。
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東日本大震災復興支援のために 「じいたん子ども基金」を開設しました。
(2012年12月10日)
【東日本大震災支援 じいたん子ども基金】 代表 土田英順
北洋銀行 札幌西支店 普通 5161660