一昨日(1月30日)更新したブログの続編です。
ブログ・大震災チャリティ動画第2弾、「そのⅠ~そのⅢ」では、演奏した1曲目から5曲目までをご紹介させていただきました。 今日は6曲目に弾いたJSバッハのアリオーソにまつわるお話です。
アリオーソはイタリア語で音楽用語。 カンタービレと同義語で「歌うように」という意味です。 教会カンタータ第156番「片足は墓穴にありてわれは立つ」の序曲の編曲でもあり、ハープシコード協奏曲第5番の第2楽章でもあります。 同じ曲を2度使うのは、バッハがこの楽想が気に入っていたからなのでしょう。
小生、音楽学生時代、チェロを専攻する生徒が上級生にも下級生にも、同級生にもいました。 小生はダントツで下手で、いつも情けない思いをして劣等感を感じてばかりいました。
友達にはチェロは歌う楽器なのに、オマエの演奏には歌がない・・と言われたり、もっと肩の力を抜いて弾けよ、岩みたいに硬いぞ・・と言われたり。 ホント、宮沢賢治じゃないけど、楽長に怒られてばかりのセロ弾きのゴーシュみたいだったんです。
先生にも怒られてばかり。 ある時、「アリオーソ」を練習しなさいって。 歌えるようになるための練習だよって。 チェロを弾く前に心の中で歌ってから弾きなさいって。
月日は流れに流れて。 1995年でしたから小生58歳の時でした。 東京郊外の「秋川キララホール」でCD録音を行いました。 小生初のソロアルバム「チェロ名曲選」の制作です。 16曲収録した中に「アリオーソ」がありました。
「アリオーソ」が1番素晴らしい! って仰せられたのは口のうるさいディレクターと、ピアニストの小森谷裕子さん。 恥ずかしながら嬉しさをはるかに上回る感激で、涙がこぼれそうになりました。
更に! これまた嬉しさを通り越してびっくり仰天したことが。 「チェロ名曲選」が北海道全域にあるCD販売店・「玉光堂」で発売になると、発売になった月と、その翌月の2ヵ月間、小澤征爾指揮・ボストン響、カラヤン指揮・ベルリンフィル、ヨーヨーマ・チェロリサイタルなどと並んで、小生ごときの「チェロ名曲選」が「玉光堂」の発表で人気ベストテン入りしたのです。 あり得ないことが現実に!
怒られたり、馬鹿にされたりしていた若い頃を思い出すと、信じられないことでした。 人間、どん底にあっても、諦めずにできることをコツコツ続けていると、いつかは報われるものだと感慨無量でした。
更に月日は流れに流れて。 2年ぐらい前でしたでしょうか。 わが友、斎藤歩さんから電話がありました。 友って気楽に言うけど、偉い人なんですぞ、この人は。 演劇界の大御所だ。 なくてはならない人、北海道の財産だ! 宝だ!
歩さん曰く。 次の公演の芝居の中で、役者が舞台上で「アリオーソ」を聴くシーンがある。 3人のチェリストの演奏をCDで聴いたが英順さんの演奏が1番いいんだ。 使わせてくれないか・・と。
もちろんOKだ。 光栄なことだ。 ありがとう。 使ってくれ、と言いました。
公演は10回ぐらいはあったのでしょう。 毎回終演後、受付に立ち寄り、チェロは誰が弾いているんですかって聞かれるお客さんがたくさんおられたそうです。
※ 動画第2弾でアリオーソが始まる時間は、39:32
つづく。
(2021年3月13日配信開始。)
(2021年12月26日配信開始。)
東日本大震災復興支援のために 「じいたん子ども基金」を開設しました。
(2012年12月10日)
【東日本大震災支援 じいたん子ども基金】 代表 土田英順
北洋銀行 札幌西支店 普通 5161660