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”さようなら 正樹”

訃報に驚き、信じられませんでした。 札幌交響楽団のステージマネージャー、田中正樹さんの旅立ち。

享年57歳。 最後に会ったのは、2019年10月27日、札幌市内のザ・ルーテルホールでした。 小生のデビュー60周年記念チェロ・リサイタルに駆けつけてくれたのです。 お手伝いをさせてくださいって。 小生がタクシーで会場に着くと、彼は会場の外に出ていて迎えてくれました。

リハーサルを始めようと、家から持ってきた折りたたみ式の譜面台を立てると、
《その譜面台でいいんですか? もっといいのがありますよ。》 

”オレにはこのホールにある譜面台は高すぎるんだ。 目線が高くなって弾きにくいんだ。” 

《低いのありますよ。》 

彼はステージ裏に行き、ガサゴソ探して小生に合う低く調節ができる譜面台を見つけてくれました。

チェロ演奏に使うピアノ椅子。 背もたれがあり、高低の調節ができるピアノ椅子です。 同じように見えても2種類あって高さが1cm弱ぐらい違い、小生には低い方が合います。

準備されていたのは高い方。 

”低いヤツないかな。”  《あるはずです。》・・と、会場内のあちこちを探して見つけてくれた小生に合うピアノ椅子。

また、開演前に面会に来る人を、失礼がないように上手にお断りしてくれる。 演奏に集中できるように配慮してくれる。 流石、一流のステージマネージャー。 演奏前に演奏家が望むことを理解している。 おかげで楽譜を読み直し、徐々に集中力を高めることができる。

ありがとう、正樹!  世話になったな。 寂しいよ。 あした、さよならを言いに行くよ。 オレもいつかはそっちへ行く。 行ったらそっちでもコンサートをやるよ。 その時はまた手伝ってくれ。 頼むよ。 

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プロフィール

土田英順

Author:土田英順
土田英順【つちだ えいじゅん】
音楽家・チェリスト。
日本フィル、新日本フィル、札幌交響楽団の首席チェロ奏者を歴任。
ボストン交響楽団およびボストンポップスでも演奏(1969〜1970)。現在ソリストとして活躍中。
全国各地、19都道府県での「東日本大震災復興支援チャリティ・コンサート」は499回を数え、震災後、東北には21回訪れ、被災地でのコンサートは105回に及ぶ。
(2023年11月現在)
被災地に滞在中、大津波の犠牲となった女性のチェロに出会い、持ち主のご遺族と友人たちの思いによってボロボロになったチェロを譲り受け、蘇らせた。
チェロの音色が天国に届く事を願いながら、今日(こんにち)も被災したチェロを奏でる。
2014年12月「第17回まちかどのフィランソロピスト賞(社会貢献)」受賞。
2015年10月「札幌芸術賞」受賞。
被災したチェロを使って録音した CD「祈り」発売。
音楽人生をまとめた著書「チェロ弾き英順 音楽の人生(たび)」出版。
第6回 全国新聞社出版協議会 ふるさと自費出版大賞において優秀賞受賞。
2017年11月 ソロプチミスト日本財団より「千嘉代子賞」受賞。
2019年10月 デビュー60周年記念チェロリサイタルを開催。
2022年4月 札幌ユネスコ協会初代広報大使に就任。

2012年12月「東日本大震災支援 じいたん子ども基金」開設。
基金は被災地の方々のために使われている。
【北洋銀行 札幌西支店 普通 5161660 口座名 東日本大震災支援 じいたん子ども基金 代表 土田英順】

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