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<幸せな一日>

5月27日に行なった86歳のチェロリサイタルは、体調との闘いでもありました。 体力、思考力、反射神経の衰えは如何ともし難いのですが、それを補うには気力を振り絞るしかありませんでした。

いつ発症するかわからない持病の心房細動・不整脈と、ひどいめまい。 不安に襲われることもありました。  10年以上も前から2ヵ月に一度の循環器病院通い。 行くたびに心電図検査と、薬の副作用を調べる血液検査。 酒を断ち、カフェイン飲料も止め、食生活にも配慮して、やるべきことはやっているんだから大丈夫、と自らを励まし不安な思いを払拭するよう努めました。

毎日の練習は僅か1時間半。 それでも高齢の身には肩や首筋が凝り、頭がぼぉ~っとしてきます。 血流が悪くなるのでしょう。 そうなったら思考が死に体になり、楽譜を見ても頭が働かず、チェロは弾けません。

何ということだ! 本番当日の朝がその状態でした。

焦るな! 自分に言い聞かせ、首をゆっくりと左右に回し、前後にも。 時間をかけてゆっくりと。 次は両腕をぐるぐるゆっくりと回す。 何回も。 徐々に徐々に血流がよくなっていくのがわかります。 頭がちょっぴりでもスッキリしてきたら両肩と首に湿布を貼る。 練習はドレミファを30分だけ。 

会場に向かうタクシー内でも首をゆっくり回します。 正に体調との闘いです。
 
会場に到着。 横浜から来てくれた娘と、大学生の孫が会場の外で待っていて、チェロと販売用のCD、本を入れたスーツケースを会場内に運んでくれました。 親孝行・爺孝行な娘と孫。

開演。 ステージに出ると、客席は満席状態で、温かな拍手で迎えてくれました。 幸せな瞬間でした。 あとは恐れずに練習してきたことをやるだけ。

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洗練され澄み切った林絵里さんのピアノ。 アンサンブルは楽し。 洋子さんのチェロの音が、ホール全体に響き渡っていくのを感じます。

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曲が終わるとブラボーの声も。 支えてくださる皆さんが喜んでいる。 何と幸せな瞬間なんだろう。 終演となり、サイン会でロビーに行くと立派な胡蝶蘭が飾ってありました。 ソロプチミスト、ユネスコ、杏花会のご婦人19名が贈ってくださったのです。 ありがとう、心の優しいレディたち。

※ 英順ファミリーと胡蝶蘭。

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打ち上げ会はイタリアンレストランで。 おいしい料理に楽しい会話。 幸せな一日でした。 辛い練習に耐えて頑張ってきてよかった。 

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来年はデビュー65周年。 もう少し頑張ってみよう。

      東日本大震災復興支援のために 「じいたん子ども基金」を開設しました。

                  (2012年12月10日)

【東日本大震災支援 じいたん子ども基金】 代表 土田英順

                               北洋銀行 札幌西支店 普通 5161660  

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プロフィール

土田英順

Author:土田英順
土田英順【つちだ えいじゅん】
音楽家・チェリスト。
日本フィル、新日本フィル、札幌交響楽団の首席チェロ奏者を歴任。
ボストン交響楽団およびボストンポップスでも演奏(1969〜1970)。現在ソリストとして活躍中。
全国各地、19都道府県での「東日本大震災復興支援チャリティ・コンサート」は494回を数え、震災後、東北には19回訪れ、被災地でのコンサートは101回に及ぶ。
(2023年9月末現在)
被災地に滞在中、大津波の犠牲となった女性のチェロに出会い、持ち主のご遺族と友人たちの思いによってボロボロになったチェロを譲り受け、蘇らせた。
チェロの音色が天国に届く事を願いながら、今日(こんにち)も被災したチェロを奏でる。
2014年12月「第17回まちかどのフィランソロピスト賞(社会貢献)」受賞。
2015年10月「札幌芸術賞」受賞。
被災したチェロを使って録音した CD「祈り」発売。
音楽人生をまとめた著書「チェロ弾き英順 音楽の人生(たび)」出版。
第6回 全国新聞社出版協議会 ふるさと自費出版大賞において優秀賞受賞。
2017年11月 ソロプチミスト日本財団より「千嘉代子賞」受賞。
2019年10月 デビュー60周年記念チェロリサイタルを開催。
2022年4月 札幌ユネスコ協会初代広報大使に就任。

2012年12月「東日本大震災支援 じいたん子ども基金」開設。
基金は被災地の方々のために使われている。
【北洋銀行 札幌西支店 普通 5161660 口座名 東日本大震災支援 じいたん子ども基金 代表 土田英順】

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